撫子さんと学ぶ会計事務所の仕事

会計事務所的よもやま話あれこれ

Episode6 事前通知と進行年度の調査(2)

nadeshiko5国税通則法の74条の2には、質問検査権についての定義があるのね。ここでは税目別に、調査について必要があるときはそれぞれに定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査し、それらの物件の提示若しくは提出を求めることができるということになっているわ。

nadeshiko1

その質問検査ができる者だけど、所得税の場合は「納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者」。法人税の場合は「法人」とその取引先。消費税の場合も「納税義務がある者若しくは納税義務があると認められる者」とその取引先ということになってるわね。

mitsukotsuujou

つまり、所得税や消費税の場合、納税義務があったり納税義務があると認められる者に対して質問検査権が及ぶから、納税義務の発生時期が関わってくるということですわね。

 

nadeshiko6

そう。だから、この考えに基づくと、暦年終了時に納税義務が生じる所得税の調査や、資産の譲渡の時に納税義務が発生する消費税の調査については、進行年度については納税義務がないため、質問検査権の範囲外ということになるのかしら。

masayukiquestionあれ?質問検査権は国税通則法の74条の2に規定されているということですけど、以前撫子さん、「所得税法なら第234条、法人税法なら第153条に質問検査権は規定されている」と言ってませんでしたっけ?

 

nadeshiko6

あら、雅之くん。よく覚えていたわね。そう、以前は質問検査権って、所得税法法人税法など、各税法ごとに定められていたの。だけど国税通則法が改正されて、平成25年からは、国税通則法でまとめて定められるようになったのよ。

 

nadeshiko5

まあ「所得税法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは・・・」という感じでまとめられただけで、内容が変わったわけではないんだけどね・・・。

 

mitsukoikari

ちょっと話が脱線してますわよ!で、結論としては「所得税や消費税の場合、質問検査権は進行年度に及ばないから、現金実査を行うことはできない」と考えてよろしいのかしら?

 

nadeshikokushou

もう、みつ子さんはせっかちなんだから・・・。ほんとうにそうだったら、調査の際に「今日の現金残高を確認させてほしい」とか「今期の帳簿を見せてほしい」なんていうわけないでしょう。

 

mitsukoiratsuki

きーっ、あなたの説明はいつも回り道ですわね!そもそも事前通知の際に、調査の対象年度を通知されているんですから、それ以外の件で質問検査を受けることは、おかしいことじゃなくって!

 

nadeshikokushou

あわてない、あわてない・・・。みつ子さん、税務調査の事前通知の際、どんなことを通知されたか、教えてもらっていいかしら?

 

mitsukotsuujou

ええっと・・・。「調査を行う旨」と「納税者の名前と住所」、「調査官の名前」に「調査の日時と場所」。それに大事なのが「調査の対象税目」、「対象期間」、「調査の目的」と「調査の対象となる帳簿などの物件」。あと事前通知事項以外の事項にも非違が疑われる場合には、その事前通知しなかった事項も調査対象になるみたいなことを言っていたかしら・・・。

nadeshiko5

さすが、みつ子さん。ちゃんと手控えで残してますね。国税通則法の74条の9では、「質問検査等を行う実地の調査を開始する日時」、「調査を行う場所」、「調査の目的」、「調査の対象となる税目」、「調査の対象となる期間」、「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」、「その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項」が事前通知事項として定められているわ。

nadeshiko5 「その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項」は、政令の30条の4で、「調査の相手方である納税義務者の氏名及び住所又は居所」、「調査を行う当該職員の氏名及び所属官署」、「法第七十四条の九第四項 の規定の趣旨」というように定められている。

nadeshiko8この最後の「法第七十四条の九第四項 の規定の趣旨」というのは、「事前通知した事項以外の事項について非違が疑われることとなつた場合において、当該事項に関し質問検査等を行うことを妨げるものではない。」というものね。みつ子さんが、事前通知の最後で言われた項目に該当するものになるわ。

mitsukoiratsuki

この最後の通知事項にはそういう意味があったのですわね・・・。何か疑わしい事項があれば、調査官は事前通知した事項にとらわれず、他のことについても質問検査権を行使できるということになるということかしら?それじゃ、何のためにこの事前通知を行うのか分からないではなくって!

nadeshiko7

みつ子さんの言うとおりね・・・。通達にも「事前通知した課税期間の調査について必要があるときは、事前通知した当該課税期間以外の課税期間(進行年分を含む。)に係る帳簿書類その他の物件も質問検査等の対象となることに留意する。」

nadeshiko8

「例えば、事前通知した課税期間の調査のために、その課税期間より前又は後の課税期間における経理処理を確認する必要があるときは、法第74条の9第4項によることなく必要な範囲で当該確認する必要がある課税期間の帳簿書類その他の物件の質問検査等を行うことは可能であることに留意する。」というものがあるから。結局進行年度分の調査は、受けざるを得ないのでしょうね。

mitsukogimon

まあ調べられても痛くないものですけど、痛くないお腹を探られるのも、何となく釈然としませんわね・・・。「法第74条の9第4項によることなく」って文言も、通達が法律をないがしろにするのかしらって印象を受けますわ・・・。

 

nadeshiko1

でも法律で手続きが明らかにされたことはいいことよね。質問検査権が行使できるのは、「所得税法人税又は消費税に関する調査について必要があるとき」だし、事前通知したこと以外について質問検査できるのは「事前通知した事項以外の事項について非違が疑われることとなつた場合」なのだから。

nadeshiko6

だからみつ子さんも金庫の中身とか進行年度について聞かれたときは、「調査上どんな必要があって、どんな非違が疑われるのでしょう?」と、その理由をしっかり確認しておけば良かったかもね。

 

mitsukotsuujou

なるほど、そうですわね・・・。調査できるにしても、その前提が法律に盛り込まれているのであれば、その前提をクリアしない限りは調査できないということになるのですから、適当な理由で調査はできない。だからしっかり理由を確認したらよいということになるのですわね。

nadeshiko5そういうこと。ところでみつ子さん、ラーメンの件、覚えてる?

 

 

mitsukotakawarai

隣の坂本飯店で、チャーシュー麺をおごるのでしたわね。なで子さんにはいろいろ教えてもらったし、お安いご用ですわ!

 

nadeshiko6

「特上チャーシューメガ盛りラーメン」を二人分よ!