撫子さん・・・、さっき行ってきた糸井商事さん。今期に本社建物を新築して使いだしていたのですけど、期末までに不動産取得税の課税通知がなかったみたいなんですね。
糸井さん結構黒字が出ているし、基本通達の7-3-3の2で不動産取得税や登録免許税その他登記又は登録のために要する費用は取得価額に算入しなくていいので、今回のように課税通知がない場合、不動産取得税を見積もって損金経理したら、損金算入されるものなんでしょうか?
本社建物だったら、付随費用は販管費になるわね。雅之くん、法人税で損金の額に算入するものって、どんなものだったっけ?
法人税法22条ですよね・・・。損金算入されるものは「その事業年度の収益に係る売上原価、完成工事原価その他これらに準ずる原価の額」、「その事業年度の販売費、一般管理費その他の費用(償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。)の額」、「当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの」の3つです。
そのとおりね。今回の糸井さんのケースの場合、「不動産取得税」という販管費に属する租税公課だから、2番目に該当する。だから期末までに債務が確定していれば、損金算入できることになるわ。
不動産を取得した場合って、 今回のように課税通知がなくても、不動産取得税を課されることは間違いないから、債務は確定してるといえるのでしょうか?
通達の2-2-12では、債務確定の判定のために次の3要件を挙げているわ。「事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること」、「事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること」、「事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること」
不動産取得税の場合、2番目の「当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること」はありえないけど、あとの2つは要件を満たしているような気がするなあ・・・?
じゃあ実際に当てはめて考えてみましょう。「事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること」、これはどうかしら?
うーん・・・「債務が成立」ってことは、納税義務が成立しているってことですよね。不動産取得税は不動産の取得者に対して課されるのですから、取得した時点で納税義務が成立して、債務も成立してるってことじゃないですか?
そのとおりよ。だけど租税の場合「納税義務の成立」の後、「納付すべき税額の確定」という手続きを踏んで、納付する税金の金額が確定することになるのよねえ・・・。
国税通則法を見ると、国税の場合だけですけど、それが書いてありますよね。申告納税方式の場合は申告書の提出、賦課課税方式の場合は賦課決定によって税額が確定するって。
ふふふ、雅之くん。法人の事業税のことを思い出して。法人の事業税って、会計では未払計上するけど、申告書上ではいったん加算して、翌期申告書を実際に提出した事業年度で認容減算するわね。この処理も、ここの考え方から来ているのよ。
申告書を提出して、やっと債務が確定・・・だからその時点で損金算入できるってわけ。
でも消費税は、その事業年度で未払計上したら、その事業年度の損金になるじゃないですか。
そう、この消費税の処理は例外的な処理なのよ。「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」の7を見て。申告期限未到来でも、損金経理で未払計上すれば、損金算入OKってわけね。だからここで例外的に挙げられているもの以外は、基本未払計上しても、実際申告するまでは損金にならないってこと。
きっと税抜方式とのバランスをとるために、未払計上が認められているのでしょうね・・・。
賦課課税方式による租税も、基本通達の9-5-1(2)に書いてありますね。賦課決定のあった日の属する事業年度の損金にするって。申告納税方式の租税が納税義務が成立していても、申告書出すまで損金にできないのと同じで、賦課課税方式の場合も納税義務が成立していても、賦課決定があるまでは見積などで損金にできないってことですね・・・。
そういうこと!ちなみに固定資産税とか自動車税とか、賦課課税方式の租税はみんな同じよ。これらはすべて賦課決定があるまで、見積計上はできないわ。
租税の場合、納税義務も確定して、金額も合理的に見積もることができても、申告するか課税通知があるまでは、損金算入できないんですね。いまいち納得できないけど、そういうものってことで仕方ないのかなあ・・・。