撫子さんと学ぶ会計事務所の仕事

会計事務所的よもやま話あれこれ

Episode10 手形・小切手の基礎知識

★雅之君、現在顧問先の今野デザインで帳簿の確認中です

nahomi1

ねえ、鳥居さん・・・今ちょっとええやろか?

 

 

masayuki6もちろんかまいませんよ、笹部さん。何かあったんですか?

 

 

nahomi3

いや、うちの会社の得意先の今津文具店さん。売掛金はいつも振り込みで払ってくれはるんやけど、この間社長が先方に行きはったときに、小切手で支払ってくれたんよ。うち小切手って見るん初めてで・・・。簿記の勉強で習ったからどういうもんかは分かるんやけど、実務ではどうやって扱うもんなんやろか?

masayuki5

今野デザインさん、当座取引ないですものね。というか、うちの事務所の顧問先も、最近当座取引している方が全然少数派ですから・・・。初めて見るというのも当然だと思いますよ。

 

nahomi1

ふーん、最近当座預金とか使う会社って、そんなにないんや・・・それで、もろてきた小切手って、こんな感じなんやけど・・・。

 

masayuki5

私も小切手見るのは久しぶりですね。ちなみに小切手って、銀行から買うときは「小切手帳」といって、50枚綴りとかの束になってるんですよね。小切手帳の中身は、こんな感じで会社控えと先方に渡す本券の2つになっていて、発行する時は両方書いた後、ミシン線で控えと本券を切り離して、本券を相手に渡す仕組みです。

名称未設定-3

nahomikanshin

へえ~、鳥居さん、小切手のことも詳しいんや・・・。なるほど、⑦番みたいに左側の控えがあれば、切り離した後も誰に渡したかとか分かるもんなあ・・・

 

masayuki6

後で帳簿につけるとき、「何時」、「いくら」、「誰に」、「何で」渡したかが分からないと、仕訳の起こしようがないですからね。この控えをちゃんと書いておくのは、結構大事ですよ。

 

nahomi1

左上の②番の二重線は何なん?

 

 

masayuki6

ああ、この二重線を引いた小切手のことを「線引小切手」って言うんですよ。小切手の事故を防ぐため、ほとんどの場合ここに線を引きますね。あと線の間に「銀行渡り」とか「BANK」っていう文字が入っていることもあります。

 

nahomi3

んんっ?何で線を引いたり銀行渡りって書いてたら、事故を防ぐことになるん?

 

masayuki5

小切手って、銀行に持参してきた人に、その場で現金で払うのが原則なんです。小切手の表面にも「上記の金額をこの小切手と引き換えに持参人にお支払いください」と書いてますよね。

 

masayuki8

だけどそれでは、例えば本来の持ち主が落としてしまって、別の第三者が拾った場合・・・その人が小切手を銀行に持ち込んだら、銀行はその場で現金をその人に払うことになります。それだと、その持ち込んだ人がどこの誰だったのかが分からないので、払ったらそれっきりで追及できなくなってしまいますね。

nahomikanshin

そうか!どこの誰だかわからん人に現金を渡してしもうたら、あとで盗まれたものとか分かっても、取り返せへんもんなあ・・・

 

masayuki6

その通りですね。線引き小切手の場合、銀行はお金を支払う場合、預金経由で支払います。つまり現金を渡すわけではなく、持参してきた人の預金口座に入金するので、誰に払ったかはあとで追求ができることになりますね。笹部さんも今後小切手を振り出すようなことがあったら、定規にボールペンでもいいので、2本線を引くようにしておいてくださいね。

nahomi2

合点!まかしといて!ちなみに右端にある「神戸2801」とか「0005-492」というのは、何を意味してるん?

 

masayuki5

上の「神戸 2801」というのは、神戸の手形交換所っていう意味ですね。小切手とか手形って、持参人から預かった銀行が手形交換所に持ち込んで、そこで振出人の当座預金の銀行から支払いを受けることになります。

 

masayuki6たとえば笹部さんがこの小切手を東灘信金さんに取り立てを依頼すると、東灘信金はこの小切手を手形交換所に持ち込んで、今津文具店さんの口座がある四菱大江戸USJ銀行から支払ってもらって、それを東灘信金の今野デザインの口座に入金してくれるわけですね。

nahomi1

なんかややこしいけど、まあうちは、この小切手を銀行に持っていけばええだけやね。この手形交換所やけど、神戸以外にも当然あるんよね?

 

masayuki6

東京とか大阪とか、各地にありますね。ちなみに手形交換所が取立銀行の場所を違うところの場合、銀行の取り立て手数料も変わってきますよ。同じ手形交換所だったら安いですし、違う場合は若干高めですね。

 

nahomi4

なんや、お金に換えるのに手数料いるんかいな・・・小切手もろたときにも領収書に印紙貼ったし、小切手って面倒なもんやねえ。今津さんも普通に振り込んでくれたらええのに・・・。

 

masayuki5

手間も手数料もかかるから、当座取引って廃れてきてるんでしょうね。ちなみに下の「0005-492」というのは金融機関のコードです。0005が四菱大江戸USJ銀行、492が東神戸支店を意味してます。

 

nahomi1

ふーん、ところで、この小切手の金額のところって、数字がぼこぼことへこんで印刷されてるんやなあ・・・

 

masayuki6

それはチェックライターという機械で印刷されてるからですね。そうやって機械でボコボコと特殊な印刷しておけば、あとでもらった人が改ざんしたりできないですからね。ちなみに手書きで書く場合には「金五拾弐萬五千円也」というように漢字で書きます。

nahomi2

もらった人があとでゼロを一つ付け加えたりしよったら、振り出した方はたまらんわなあ!

 

masayuki5

あと小切手で気を付けるところは、③のように控えと本券の間を銀行印で割り印しておくこと。⑤のように署名して銀行印を押しておくこと、⑥に振出日を記載しておくことぐらいですね。

 

nahomi1

うちの会社が当座預金開くこともないやろうけど、ちゃんと覚えとこ。当座いうたら手形もあるけど、手形も小切手とおんなじような感じやろか?

 

masayuki6

似てるところもあるけれど、違うところもありますね。ついでに説明しちゃいましょうか・・・。手形って、こんな感じです。控えと本券があるところ、基本金額をチェックライターで印刷しないとダメなところとかは、小切手と同じですね。

 

tegata

nahomikanshin

なんや小切手と比べると、えらく記載事項が多なったような・・・。鳥居さん、違うとこって具体的にどこやろか?

 

masayuki5

三か所だけですね。振出人が①のところに収入印紙を貼って消印しないとダメなこと。②の箇所に受取人の名前を書かないとダメなところ、③の支払期日を書かないとダメなところ・・・

 

nahomi1

手形は現金になる日が決まってるから、支払期日は当然書かんとあかんし・・・あっ、受取人が書いてあるってことは、小切手みたいに誰が持って行っても支払ってくれへんのやね。

 

masayuki7

貼らないとダメな収入印紙も、次の表の様にバカになりませんよ。払う方は、手形帳買って、印紙貼って、書留で送って・・・。もらう方は領収書に印紙貼って、郵便で返送して、取り立て手数料を銀行に払って・・・。今野デザインさんみたいにネットバンキングで振込む方がどれだけ効率的か・・・

 

inshihyou

nahomi2へへっ、うちの会社って意外と先進的やったんや。でも鳥居さん、いろんなこと知ってるんやねえ・・・うちも負けんと勉強せなあかんなあ・・・