撫子さんと学ぶ会計事務所の仕事

会計事務所的よもやま話あれこれ

Episode18 広大地の判定ってどうするの?①

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うーん、この土地って広大地に該当するのかな・・・?

 

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おや雅之くん、お悩みですわね。なんでしたら私が相談に乗ってあげてもいいことよ。

 

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ありがとうございます。でもみつ子さんだと、頼りになるかどうか・・・

 

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あら、雅之くんのくせに言ってくれますわね!それで一体どのようなことでお悩みなのかしら?

 

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先日金澤商事の社長さんから「うちの持ってるこの土地、相続のときどれぐらいの評価になるのか、一回調べてくれない」と言われたので、評価額を計算しているんですよ。

ただ、この土地結構大きいので「広大地」に該当するような気もするのですけど、その判定の方法が分からなくて・・・。

 

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うっ、財産評価ですわね・・・。確かに私の苦手分野には間違いないですわ・・・

 

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税理士試験でも広大地の計算式は習うんですけど、評価対象の土地が広大地と分かっているのが前提で、実際その土地が広大地に該当するのかどうかは習ってないですしね。

実務ではどうやって判定するのかなあ・・・?

 

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こういう場合は、あの税金マニア、なで子さんの出番でしょ。呼んでくるわね・・・

 

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みつ子さんに引っ張ってこられたんだけど・・・雅之くん・・・広大地の判定で迷ってるんだって?

 

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ああ、撫子さん。そうなんです。金澤さんから土地の評価を頼まれて図面を見ているのですけど、結構大きいので広大地に該当するのかなあと思いながら、どこで判断すればいいのか迷っていて・・・

 

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広大地に該当すれば、本来の一平米の評価額に以下の「広大地補正率」をかけて計算するから、評価額が4割以上下がるわけだからね

広大地の評価額=広大地の面する路線の路線価×広大地補正率×面積

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広大地に該当すると、相続税もぐっと下がるし、この判定は外せないポイントよ

 

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広大地になると、相続税の評価がぐっと下がることぐらいは分かっておりますわ!その広大地になるかどうかの基準ですけど、広大地というからには、一定の面積以上であれば広大地に該当するのかしら?

 

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うーん、みつ子さん。そんな単純なものではないわよ。

広大地の評価については、財産評価基本通達に書かれているから、まずそれを見てみましょうか・・・

 

(広大地の評価)

24-4 その地域における標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で都市計画法第4条第12項に規定する開発行為を行うとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(22-2(大規模工場用地)に定める大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの(その宅地について、経済的に最も合理的であると認められる開発行為が中高層の集合住宅等を建築することを目的とするものであると認められるものをいう。)を除く。以下「広大地」という。)の価額は、原則として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価する。

 

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これを噛み砕くと、広大地というのは、

「その地域の標準的な宅地より著しく地積が広大な宅地」で、「都市計画法に基づく開発行為をする場合に公共公益的施設用地の負担が必要なもの」のうち、

「大規模工場用地に該当するもの」と「中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているもの 」を除いたもの

ということになるわね。

 

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「何㎡以上は広大地」と画一的に決められているものではないのですわね・・・

 

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その通りよ。この判定基準をフローチャートにしたものが平成17年に、国税庁の資料として以下のようにでているわ。

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へえ〜、こういう風にフローチャートがあると分かりやすいですね

 

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そうね。でも雅之くん、フローチャートを見る前に、なぜ広大地の評価減という制度があるのか、その趣旨を理解しておくことが大切よ

ねえ、みつ子さん。なぜ広大地だと、相続税の評価が下がるのかしら?

 

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えっ、私にふっていらっしゃるの・・・?えーっと、土地があんまり広すぎたら、使い勝手が悪くなるからかしら・・・?

 

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うん、60点って感じかな。

広大地が評価減の対象となるのは、開発をした場合に道路や公園といった本来の用に使えない「潰れ地」が発生するような土地だからなのよね。

だから、戸建住宅分譲用地が最適で、その開発の際に道路などの潰れ地が生じる見込みの土地とかだったら広大地に該当するわけ。

逆に面積が大きな土地であっても、大規模工場用地に最適な土地や、マンションや大規模店舗などの敷地用地 に適している土地だったら、潰れ地は発生しないから、広大地に該当する可能性は低くなってくるわね

 

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逆に言えば、戸建住宅分譲用地が最適な土地であっても、潰れ地が発生しないような土地であれば、広大地の評価減を適用できないわよ

例えば以下のような場合・・・

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こんな道路からの奥行きがほとんどない土地なら、いくら広くても、潰れ地が発生しないので、広大地には該当しないわね。

また以下のような、旗竿地にして何とかなるような土地でも、やはり潰れ地は発生しないから広大地には該当しないでしょうね。

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一方で奥行きが深く、開発道路を入れないととても戸建分譲地として売れないような次のような土地だったら、道路による潰れ地が出てしまうので、広大地に該当してくるでしょうね。

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なるほど、道路で死んでしまう部分があれば、広大地に該当するってことなんですね。

じゃあ撫子さん、上の土地の区画割ですけど、仮に次のように割ってみると潰れ地がでないってことになりますから、広大地に該当しないって言われることはないんですか?

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戸建分譲地として売るために土地を開発するんだから、無理に路地状開発してこんなウナギの寝床みたいな土地を作ってしまったら、よっぽど市街地のど真ん中でもない限り、きっと売れないんじゃないかなあ・・・

この辺は常識的に考えて区割り案を考えてもいいんじゃないかしら・・・

 

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オーホッホ、雅之くん、面白いことを考えますわね!こんなタコ足みたいな土地、誰が買うっていうのかしら

でもなで子さん、広大地についての基本的な考え方は分かりましたわ。原則戸建て分譲地として開発する見込みがあって、開発の際に道路などの無駄な潰れ地が発生する見込みであれば、広大地評価の対象となるというわけですわね

では具体的にどうやって判定していくのか、教えてくださるかしら

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じゃあ次からは、フローチャートにそってどうやって判断していくのかを見ていくわね

 

→Episode19 広大地の判定ってどうするの?②に続く